福井晴敏(ふくい はるとし)の作品です。
あらすじ
Ⅰ
終戦の日、日銀の地下金庫から莫大な金塊が姿を消した。戦後の混乱と日本の復興を糧に膨れ上がったその資産の名は『M資金』。70年の歳月が流れ、詐欺を生業とする真舟雄一の前に”M”と名乗る男が現れ、あるとてつもない計画を持ちかける。閉塞し混迷を深める世界に革命を促す書下ろしサスペンス超大作。
Ⅱ
謎の男”M”に盗み出してほしいと依頼された「M資金』。かつて育ての親を死に至らしめたその存在に呪縛され続けてきた真舟は、”M”との接触を機に日本の地下に蠢く力学の奔流に呑み込まれていく。この世界をあまねく支配する”ルール”の外へ真舟はこれまでの人生を覆し、依頼を受ける覚悟を決める。
Ⅲ
ロシアのファンドマネージャー鵠沼英司は簿外取引を繰り返し、 小国の国家予算並みの赤字を抱え込んでいた。本部の査察が入り絶体絶命となった鵠沼は窮地から逃れるため、国家間の恐ろしい陰謀に荷担するが――。真舟の一世一代の周到な計画は、強固に守られた電子上の莫大な金『M資金』を盗み出せるのか?
Ⅳ
思いがけずロシアで出くわしたのは、6年前から真舟を恨み執拗に追っていたヤクザ酒田だった。間一髪逃れた真舟だが、『M資金』を盗み出す大博打の最終局面で再び窮地に陥る。観念した真舟の前に姿を現したのは――。「世界が変わる瞬間をあなたに見せたい」。真舟に告げた”M”の正体は、計画の真の目的は?
Ⅴ
資本という魔物に食い尽くされつつある世界を救うには。呪われた遺産「M資金」の継承者たる自分がなすべきことは。求道者のごとく問い続けながら世界を彷徨していた笹倉暢人は、流れ着いアジア辺境の小国でついにその答えと出会った。自分がしたことの真の意味を知った真舟の前に立ちはだかるものは?
Ⅵ
暢人は捕らえられた。それを黙って見送るしかなかった石(せき)、人生最後の猶予を与えられた本庄、帰国と同時に美由紀に拘束された真舟。絶体絶命の男たちはそれでも暢人を救うため、そして『人類資金』を未来につなげるために、ある戦いを挑む。巨大な敵を相手にわずか三人暢人を、そして世界を救えるか?
Ⅶ
本庄が命と引き替えに手に入れた〝爆弾”を託された真舟と美由紀は関西最大の広域暴力団と組み、世界の株式市場を相手に壮絶な仕手戦を仕掛ける。期限はわずか三週間。そして石は暢人の命と『M資金』の未来を背負い、ただ一人ある舞台へと――。人間への信頼を高らかに謳い上げる一大巨編、ついに完結!
(文庫本裏表紙より)
おすすめポイント
壮大なスケールで物語が展開される『人類資金』は独特の世界観、読み応えなし、とは言わせません。
グローバル経済や金融の仕組みを背景に人類の未来、倫理、そして経済システムの持続可能性など深いテーマです。
複数の登場人物がそれぞれの信念と価値観に基づき、人類資金をめぐる大きな謎に挑む過程では、難しい経済理論や金融の動きを物語の中で自然に解説してくれているので理解も深まり、ぐいぐい引きずられていくこと請け合いです。
現実世界での経済活動や個人の行動において考えさられ、未来に向けた持続可能な社会のあり方を模索する一助と……。
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