Yokaが選ぶ文学! 騎士団長殺し

文学

あらすじ

1
私は時間を味方につけなくてはならない――妻と別離して彷徨い、海をのぞむ小田原の小暗い森の山荘で、 深い孤独の中に暮らす三十六歳の肖像画家。

やがて屋根裏のみみずくと夜中に鳴る鈴に導かれ、謎めいた出来事が次々と起こり始める。

緑濃い谷の向こう側からあらわれる不思議な白髪の隣人、雑木林の祠と石室、古いレコード、そして「騎士団長」 ……。

物語が豊かに連環する村上文学の結晶!

2
「わかりきったことじゃないかね」と誰かが言った。ある夜、 主人公の前に顕れたのは「イデア」だっ

た。イデア!?山荘のスタジオで一度は捨てたはずの肖像画制作に没頭する「私」の時間はねじれ、旋回し、反転する。

不思議の国のアリス、上田秋成「春雨物語」、闇の奥でうごめく歴史の記憶、キャンバスの前に佇む美しい少女多彩な人物と暗喩が織りなす物語は、さらに深く、 魂の森の奥へ。

3
雑木林の小径を抜けて、 肖像画のモデルとなった少女が山荘を訪れる。屋根裏に隠された絵と「私」の描いた絵······パズルのピースのように、四枚の絵が一つの物語を浮かび上がらせる。

谷の向かい側から銀色のジャガーで現れる白髪の紳士、奇妙な喋り方で主人公に謎をかける「騎士団長」。

やがて、山荘の持ち主の老画家をめぐる歴史の闇も明らかになるが、真夜中の鈴は、まだ鳴り止まない。

4
「簡単なことだ。あたしを殺せばよろしい」と騎士団長は言った。

「彼」が犠牲を払い、「私」が試練を受けるのだ。だが姿を消した少女の行方は······。

「私」と少女は、ふたたび出会えるのか。暗い地下迷路を進み、「顔のない男」に肖像画を描くよう迫られる画家。

はたして古い祠から開いた世界の輪を閉じることはできるのか。「君はそれを信じたほうがいい」物語は希望と恩寵の扉へ向かう。

(文庫本裏表紙より)

おすすめポイント

4巻に渡る圧倒的なボリュームと、やっぱり村上春樹さんの独特な世界観に引き込まれっぱなしの作品です。

絵画、音楽などの要素が織り込まれていて奥深く、時間や存在、人間の心の葛藤など、哲学的なテーマが散りばめられています。そこに村上文学が相まってくるものだから、物語の先が気になって止まりませんでした。

シンプルでありながら繊細な文体、言葉の選び方や描写が物語の装いを一層深めます。

騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編(上) (新潮文庫) [ 村上 春樹 ]
騎士団長殺し 第1部 顕れるイデア編(下) (新潮文庫) [ 村上 春樹 ]
騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編(上) (新潮文庫) [ 村上 春樹 ]
騎士団長殺し 第2部 遷ろうメタファー編(下) (新潮文庫) [ 村上 春樹 ]

コメント