暗闇の中に隠された真実を探る、ミステリー小説の魅力に迫る。
翻弄され、予想を覆す驚きの展開。犯人の正体を追い求める興奮と、謎解きの快感。
ミステリー小説5選の第4弾です。
マジシャン
松岡圭祐(まつおかけいすけ)さんの作品です。
あらすじ
手も触れずカネを倍にしてくれる男がいる!
あやしげな噂に大規模な詐欺の臭いを嗅ぎつけた刑事舛城は、天才的なマジックの才能を持つ少女・沙希の助けを借り捜査を始めた。
舛城は防犯カメラがとらえた現場映像を入手。そこには確かに倍に増えていく札束の山が映っていた!
いったいどんなトリックなのか? そして裏で進行する金融詐欺の真相は?
スリリングかつリアルな知的頭脳戦の“最終形”が開幕する!
(文庫本裏表紙より)
おすすめポイント
松岡圭祐作品の特徴にストーリーテリングがあると思っています。
「マジシャン」もその例外ではありませんでしたね。
何より、松岡さんの描くヒロインは人間味あふれ、強く、美しい……。
徹底して調べている、があるからでしょう。マジック、そしてそのトリックについての詳細な描写には現実感が伴い、魅力的な登場人物たちと緻密なプロット、心地よいテンポに引き込まれていきます。
とにかくエンターテイメント性、キャラクターの魅力、リアリティ、独自のミステリー要素が詰まっている作品です。
慟哭
貫井徳郎(ぬくいとくろう)さんの作品です。
あらすじ
連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。
異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。
こうした緊張下で事態は新しい方向へ!
幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。
(文庫本裏表紙より)
おすすめポイント
この作品を読み進めていると、人間の心の奥底にある闇や葛藤と向き合うことになります。
人間の本質というのでしょうか、愛、憎悪について考えさせられてしまうのです。
事件の真相に迫る過程で登場人物たちの内面が浮き彫りになります。緻密なトリックと巧妙な伏線が張り巡らされたスリリングな展開に惹きつけられるのはもちろんですが、作者が伝えたいことは、すべての謎が解き明かされた後に表現される感情、にあるのだと思いました。
正義とは?
罪とは?
深い人間ドラマと本格ミステリーです。
ぜひ、『慟哭』の世界観を堪能してください。
天使のナイフ
薬丸岳(やくまるがく)さんの作品です。
あらすじ
生後五ヵ月の娘の目の前で妻は殺された。
だが、犯行に及んだ三人は、十三歳の少年だったため、罪に問われることはなかった。
四年後、犯人の一人が殺され、桧山貴志は疑惑の人となる。
「殺してやりたかった。でも俺は殺していない」
裁かれなかった真実と必死に向き合う男を描いた、第5回江戸川乱歩賞受賞作。
(文庫本裏表紙より)
おすすめポイント
少年犯罪をテーマに描かれた作品です。
心の奥深くを覗き見るような、
目を凝らして闇を睨みつけるような、
加害者と被害者、そして周囲の人々の葛藤や苦悩が心に残ります。
家庭環境、学校のいじめ、現代社会が抱える問題を正面から捉えているだけではなく、巧みな構成で進むミステリーの要素が絡み合います。
綺麗な文章、言葉の選び方も相まって、緊迫感あふれる展開に引き込まれていきます。
フェミニズム殺人事件
筒井康隆(つついやすたか)さんの作品です。
あらすじ
南紀・産浜(うぶはま)の高級リゾートホテル。待遇、料理が抜群で、選ばれた紳士淑女だけが宿泊できる。
作家・石坂は執筆のため、このホテルに滞在した。
夜ごとのディナーとお洒落な会話、滞在客は石坂の他五名。
会社役員夫妻、美貌のキャリアウーマン、地元の名士、大学助教授だった。
サロン的雰囲気、完全密室の中で、三人が次々と殺された。
奇抜なトリックの謎を解く、本格推理長編。
(文庫本裏表紙より)
おすすめポイント
結論から言って、ミステリーとしては物足りなさを感じるかも、です。
だけども、完全密室状態での殺人事件が発生、推理しながら物語を進んでいくという古典的な趣は、どこか安心して読み進められるものでした。
ミステリー小説という側面だけではなく、フェミニズムという社会的なテーマを扱っているということからも、現代社会における男女関係やジェンダー問題について考えさせられる作品でした。
そして、やはり筒井康隆さん独特なユーモアも味付けとなっていますので、楽しめる1冊です。
スイッチ悪意の実験
潮谷験(しおたにけん)の作品です。
あらすじ
私立狼谷大学に通う箱川小雪は友人たちとアルバイトに参加した。
一ヵ月、何もしなくても百万円。ただし―《押せば幸せな家族が破滅するスイッチ》を持って暮らすこと。
誰も押さないはずだった。
だが、小雪は思い知らされる。
想像を超えた純粋な悪の存在を。
第66回メフィスト賞受賞の本格ミステリー長編!
(文庫本裏表紙より)
おすすめポイント
これまで出会ったことのない〝ストーリー設定〟だと、途中、読み進めていて思いました。
「悪意」というテーマが本筋にあります。
スマホのアプリで他人の中に入り込み、そして人間の本性が穿り出されていきます。
展開は予想だにしないことばかりです。自分の引き出しがあまり通用しないというのか……。
最後には浮き彫りになる人の心理、倫理観やモラルというものをまざまざと見せつけられ、考えさせられた作品となりました。
スイッチを押したのは誰なのか。たしかにミステリーの要素は満載なのですが、それだけにとどまらない世界観を楽しむことができます。
まとめ
以上がYokaおすすめのミステリー5つの物語でした。
第4弾も、読者を不思議な世界へと誘う作品群です。
意外な展開に驚かされ、正体が明かされる瞬間の緊張感。それぞれの作品が織りなす独自の物語世界に、心を奪われます。
鮮やかな筆致で描かれるキャラクターたちの心理描写や、複雑に絡み合う事件の謎解きに、思わず引き込まれてしまいます。
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