景気後退時に政府はどう動くのか。
経済を活性化させる「積極財政」か、財政の健全化を優先する「緊縮財政」か。
どちらの政策がより良い効果をもたらすのか。
今回は両者の歴史的な背景や、メリット・デメリットを見ていきたいと思います。
あなたはどちらの政策を支持しますか?
積極財政と緊縮財政とは? 基本的な考え方とその歴史
「積極財政」と「緊縮財政」という言葉を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
積極財政
景気後退時に、政府が積極的に財政支出を増やしたり、税金を減らしたりすることで、経済を活性化させようとする政策のことです。
公共事業を拡大したり、減税を実施したりといった政策が挙げられます。
この政策の根底にある考え方は……
政府の支出が増えれば、企業の売り上げが増え、家計に所得増にも繋がりますし、雇用も創出も促され、結果的に経済全体が活性化するということです。
緊縮財政
景気後退時に、政府が財政支出を削減したり、税金を増やしたりすることで、財政の健全化を図ろうとする政策のことです。
歳出削減や増税といった政策が挙げられます。
この政策の根底にある考え方は……
財政赤字が膨らむことを防ぎ、将来世代への負担を軽減することです。つまり、経済の体力を回復させるために、一時的に我慢して、支出を控えるという考え方と言えるでしょうか。
歴史を振り返ってみると、積極財政と緊縮財政は、古くから議論されてきた経済政策です。
1930年代の大恐慌時には、ケインズ経済学の提唱者であるジョン・メイナード・ケインズが、積極財政を提唱し、大きな影響を与えました。
ケインズは、不況時は政府が財政出動し、過剰な生産に応えられるように有効需要を創り出すべきと説きました。
一方、1970年代のスタグフレーション(インフレと失業率が同時に高まる状態)を経験した各国では、緊縮財政が重視されるようになりました。
どちらの政策が良いのか、という問いに対しては、一概に答えを出すことはできません。
経済状況や、目指す社会のあり方によって、最適な政策は変わってくるからです。
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次は、積極財政と緊縮財政の具体的なメリットとデメリットについて、お伝えしたいと思います。
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積極財政と緊縮財政のメリット・デメリット
積極財政と緊縮財政の基本的な考え方をお伝えしましたが、ここではそれぞれの政策のメリットとデメリットについて、より詳しく見ていきましょう。
積極財政のメリット
積極財政のメリットのひとつに、景気を刺激し、雇用を創出する、があります。
政府が積極的に支出することで、企業の売り上げが増え、投資が活発化します。これにより、雇用が増え、家計所得が増加し、さらに消費が増えるという好循環が生まれます。
また、公共事業などを通じて社会インフラの整備が進み、国民生活の質の向上にも繋がります。
さらに、積極財政は、新たな産業の育成にも貢献します。政府が特定の産業に投資することで、その産業の技術革新を促し、国際競争力を高めることができるわけです。
積極財政のデメリット
積極財政には、財政赤字の拡大というデメリットの側面があります。政府の支出が増えれば、それだけ税収との差が大きくなります。国債発行額が増加され、これは、将来世代への負担を増やすことになり、財政の持続可能性を危うくする可能性がある、と言われています。
また、積極財政が過度に行われると、インフレを引き起こすリスクもあります。政府の支出が増え、需要が供給を上回ると、物価が上昇し、生活が苦しくなる人々が出てくるかもしれません。
これは、あくまでも過度に行われると、になるでしょうが……
緊縮財政のメリット
緊縮財政のメリットは、財政の健全化が図られる、ということにあります。
政府支出を削減し、税収を増やすことで、財政赤字を減らし、国債残高を抑制することができます。これは、将来世代への負担を軽減し、経済の安定化に貢献、また、インフレを抑える効果も期待できると言われています。政府支出が抑制されれば、需要が減少し、物価の上昇が抑えられる可能性があるというわけです。
緊縮財政のデメリット
緊縮財政には、景気後退を招くという大きなデメリットがあります。政府支出が削減されれば、企業の売り上げが減少し、投資が縮小、結果的に雇用が失われる可能性があります。
さらに、緊縮財政は、公共サービスの低下に繋がる可能性もあります。
教育や医療などの公共サービスへの支出が削減されると、国民生活の質が低下し、社会全体の活力が失われるかもしれません。
積極財政と緊縮財政、どちらの政策がより良いのかは、経済状況や政策目標によって異なります。
重要なのは、それぞれの政策のメリットとデメリットを理解し、経済状況に合わせて最適な政策を選択することです……が、経済政策は、単に経済的な問題だけでなく、社会的な問題や政治的な問題とも深く関わっています。
次は、現代社会における積極財政と緊縮財政について、より詳しく見ていきます。
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現代社会における積極財政と緊縮財政
さて、ここまで積極財政と緊縮財政の基礎的な考え方やメリット・デメリットについて見てきました。では、現代社会において、この2つの政策はどのように考えられ、どのように活用されているのでしょうか。
2008年のリーマン・ショック以降、世界経済は大きな変動を経験してきました。
各国政府は、景気後退から脱却するために、大規模な財政支出を行うなど、積極的な財政政策を採用してきました。これは、ケインズ経済学の考え方が再び注目されたことを示しています。
しかし、財政赤字が膨らんだことへの懸念から、緊縮財政に転換する国も少なくありません。特に、欧州債務危機以降、財政健全化が求められるようになり、多くの欧州各国が緊縮財政政策を推進してきました。
近年では、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が、経済に大きな打撃を与えました。この危機に対処するため、各国政府は再び大規模な財政支出を行い、経済を下支えしようとしました。
この時期の刺激策としては、財政出動が最良の経済政策だった、が……
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響は長期化する可能性があって、財政赤字の拡大が懸念されていたわけです。そのため、経済回復と財政健全化の両立という難しい課題に直面することになりました。
今後の経済政策の方向性としては、持続可能な経済成長、格差の是正、環境問題への対応などが挙げられます。これらの課題を解決するためにも、積極財政と緊縮財政のどちらの政策が強く求められるのか。
例えば、再生可能エネルギーへの投資や、教育や医療への支出を増やすといった政策は、長期的に見れば経済成長につながり、社会全体の幸福度を高める可能性があります。これらの政策は、積極財政の方向性を含みつつ、財政の持続可能性も考慮する必要があるのでしょう。
また、少子高齢化が進んでいる日本では、社会保障費の増大が大きな課題となっています。この問題に対処するためには、生産年齢人口の減少を補うような政策や、高齢者の雇用促進策などを検討する必要があります。これらの政策は、増税といった緊縮財政に向かう要素が求められるものかもしれませんが、中長期的に見れば、経済の活性化に繋がる可能性があるかもしれません。
現代社会において、経済状況や政策目標によって最適解は変化すると思っています。だからこそ、それぞれの政策のメリットとデメリットを理解し、経済状況に合わせて柔軟に政策を選択することになるわけですが……。
しかしながら、社会的な問題だけでなく、政治的な絡みが根深いこの日本では、持続可能な経済成長を実現するための新しい経済モデルを構築していくことが果たして可能なのか……。
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まとめ
景気後退時に政府が取る経済政策として、積極財政と緊縮財政ではどちらの政策が……。
積極財政は、政府支出を増やし景気を刺激しますが、財政赤字の拡大が懸念されます。一方、緊縮財政は、政府支出を削減し財政健全化を図りますが、景気後退を招く可能性があります。
どちらの政策が最適かは、経済状況や目指す社会によって異なります。
重要なのは、経済状況に合わせて柔軟に政策を選択し、持続可能な経済成長を目指していくことです。
今回は、積極財政と緊縮財政とはどういった経済政策なのか、基本的な考え方をお伝えしましたが、個人的な見解はまた別の記事でお話できればと思います。
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